キャベツの中からアオムシが出てくる光景を見たことがある人もいると思います。
虫が付くほどおいしい野菜、だとか、無農薬の証拠、とか言われたりしますが、本当のところがどうなのでしょうか。
それはキャベツがあえて虫に食べさせている、が正解だと思っています。
目次
<キャベツの葉っぱの分別>
キャベツの葉っぱは大きく2つに分けることができます。
1つは外皮。外側の葉っぱ。
もう一つは内皮。内側の葉っぱです。
料理をするときも外側の葉っぱと、内側の葉っぱは分けていると思います。
キャベツの生長過程でも外葉と内葉は別物なのです。
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<キャベツの葉っぱの生長の仕方>
キャベツは、発芽してから、外葉部分が生長します。
そして後から内側にくる葉っぱが生長していきます。
栽培の話しになりますが、
外葉部分の大きさでキャベツの全体の大きさが決まると言われています。
ですので、大きなキャベツを作りたい場合は、最初に育つ葉っぱをいかに大きくするかに重点をおく必要があります。
さて、キャベツにとって一番の目的は何でしょうか。
それは子孫を残すことだと思います。
つまり、種を残すことです。
キャベツの種は、内葉の中心にあります(厳密には、中心から新たに作られていきます)。
その中心部分を健全に育てることがキャベツ全体の目的です。
ですので、キャベツの根っこも葉っぱも、種が健全に育つのならば、ちぎられようが、虫に食われようが、病気になろうが関係ないのです。
最終的に、結球しているキャベツの中心が割れて、内から伸びてくる芽に花をつけ、種をつけることで一生を終えます。
<植物の栄養吸収の一般論>
植物は、光合成をすることで、植物内で化学合成をし、
光合成で作られた養分と根から吸収した養分を合成することで身体をつくっていきます。
植物は、自ら作り出すことができる養分がありますが、
作り出すことができないものもあります。
その一つが リン です。
リンは作り出すことができないので根から吸収するしかありません。
<キャベツはリンをどこから集めるか>
基本的に、植物は根から養分を吸収します。
リンも同じです。
ここで注目してほしいことは、キャベツは特殊な方法でリンを集めている!ということです。
それが最初の話しに出した、外葉と内葉の違いがポイントになってきます。
キャベツは、外葉を虫が集まりやすいようにしています。
例えば、外葉に虫が寄ってくる窒素分を多く含んでおくことや、
虫が乗りやすいように葉っぱを平にすることです。
ではなぜわざわざ虫に食べられやすいようにするかということですが、
1つは、種を作る内葉を虫に食べられないようにするために、外葉を囮に使っていること。
もう一つは、アオムシの糞には リン が豊富に含まれているからです。
つまり、外葉をアオムシに食べさせて糞をさせると、その糞が土に落ち、キャベツの周辺にリンが供給され、そのリンをキャベツの根が吸収するという循環を作り出しているのです。
つまり、自然界でのキャベツは、リンを、アオムシの糞から集めているのです!
<農薬散布と無肥料栽培は相いれない>
上のことからわかることは、キャベツに虫が付くのが嫌だから農薬を散布すると、アオムシがいなくなるので、リンの供給がされない。
さらに無肥料(無施肥)栽培をしようとしたら、リンの供給が劇的に減る。
結果的に、キャベツをつくることが理論上できないことになります。
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<キャベツが虫に食べられているのは、キャベツの戦略>
キャベツを自然界の循環の中で育てようとしたときのポイントは、
外葉を大きく育て、アオムシに外葉だけを食べさせて糞をさせること、です。
虫がいて糞も付いていて、虫食いのあるキャベツなんか食べたくない、というのが消費者の本音だと思います。
しかし、キャベツにとって人間消費者の気持ちなんて知ったことじゃありません。
何度も言いますが、キャベツにとって生きる目的は種を作ることだからです。
<消費者の心構え>
虫食い糞付きのキャベツなんか嫌だ、という消費者に認識をしておいてほしいことは、
外葉の虫食い、フン付きのキャベツは、
自然界の循環ある健全なキャベツであるということです。
そこに人間の思惑が入り込み、農薬を使って虫を寄せ付けない代わりに、肥料を与えるということになります。(悪いわけではありません。必然の流れというだけです)
別の栽培順序ですと、虫を手で取ったとしても、リンの補給が少ないので、肥料を使う必要が出てくる。
自然界は単純ではないので、今回の話しも絶対的な説明にはなり得ないと思います。
しかし、なぜ虫がいるのか、なぜキャベツは特に虫の糞が多いのかを考えてみると、自然界の動きが少し見えてきます。
そうすると日々目にする野菜のことも、綺麗なだけがすべてではないことが解ると思います。
今回の記事が野菜をみるときの一つの視点となれたらと思います。
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