無肥料と無施肥と無栄養と有機栽培なんのこと?

言葉はやっぱり難しいもので、書き手としても受け手としてもすんなり理解できないことが多々あります。

関連記事:有機JASへの勘違い

では今回は無肥料、無施肥、無栄養、有機のそれぞれの言葉の違いを書いてみたいと思います。

<流行り文句は安心を与えてくれる>

 

dumbcat / Pixabay

農薬に対する危険が言われるようになってから「無農薬野菜」という言葉が流行りました。無農薬=安全だと認識する人が大勢いて、その流行りを知ることで安心を得ることができました。

また、化学肥料栽培ではなく、有機肥料栽培が流行り出すと、有機野菜を求める人が多くなり、そこにまた安心を求めるようになりました。

そして次に流行るのは、無肥料栽培野菜だと思います。
聞いたことがある人がいるかと思いますが、無肥料で栽培した野菜のことです。

ここでもやはり言葉をよく考えてみると、「?」になります。

無肥料栽培って? 肥料がないってこと? 砂で栽培? 水耕栽培? 栄養がいらない? 化成肥料でも有機肥料でもない別の新種の肥料?自然栽培や自然農とは違う?

 

断り:野良自然農園では、流行っているから栽培方法が変わるというわけではなく、突き詰めて考えた結果として栽培方法が変わったり、むしろ変わらなかったり、
求める野菜が変わったり、変わらなかったりするだけです。

 

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<野菜栽培に関する科学の進歩>

 

今の学校の教科書では、作物に欠かせない要素があり、
空気や水と、多量要素と微量要素とに分けてあります。

肥料成分

レインボー薬品株式会社より

空気や水には、酸素(O)、水素(H)、炭素(C)、

多量要素には、窒素(N)、りん酸(P)、カリウム(K)の三大要素と、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、

微量要素には、鉄、マンガン、亜鉛などなど

これらの要素があることで植物は生長できるとされています。

ではこれらを植物はどう吸収するのかという認識が科学の進歩によって移り変わってきたのです。
3つ紹介します。

植物は根から土の粒を取り込んで生長しているという説。

植物は落ち葉などの腐食物(有機物)を根から取り込んで生長している腐食栄養説。

植物は、微生物の働きによって有機物が無機物になってから根から取り込んで生長している無機栄養説。

 

ちなみに、最後の無機栄養説が今の定説となっています。

その結果、有機物を与えて微生物に分解してもらってから(無機質に変えてもらってから)養分として作物が吸収する
という行程を省いて

最初から作物が吸収できるように無機質肥料を与える
というやり方に変わっていったのです。

この無機質肥料を、化学的に処理されたものとして、化成肥料と呼んでいます。化成肥料は微生物の働きを気にすることなく、水に溶けたらすぐに作物が吸収してくれるので使い勝手がよいのです。
最初から水に溶かしてある肥料(液肥)もあります。

この化成肥料と農薬散布を合わせた農業慣行農業と呼んでいます。

慣行農業が主流になったのも時代の流れの必然だったのです。

 

さらに話を進めます。

 

現在は無機栄養説が定説となっているという話をしました。

しかし、ごく最近では、植物は有機物を直接取り込むことができているかもしれない!ということが言われてきています。
いわゆる腐食栄養説の浮上です。

ですがまだはっきりしていません。
科学の進歩と研究によっていつかははっきりするかもしれませんが、まだすべてがわかっているわけではないのが現状です。

 

<結局のところ、植物に栄養は必要>

 

話しを戻します。

タイトルのように言葉の使い方はいろいろです。

無肥料、無栄養、有機、無機、水耕栽培。どの言葉を使おうが、結局のところ植物の生長に養分は必要です。その養分をどう吸収してもらうかという方法の違いです。

ですから無栄養栽培なんてものはありえません。

有機栽培(有機肥料栽培)と無機栽培(化成肥料栽培)は与える肥料が違うだけです。
人間にとっての是非や自然界の循環は別にして、
植物単体にとっては有機質だろうが無機質だろうが養分は養分であり、必要なものです。

無肥料栽培とは、言い換えれば「無施肥」栽培です。肥料を与えずに作物を育てる栽培です。
ですが栄養は必要ですので、その栄養を施肥(肥料を与えること)という方法ではなく、その土地にある養分を活かすことで作物に生長してもうらう、という方法です。
根張りをよくすることや、光合成を最大限活用すること、水やりを極める、といった方法になります。

 

植物の養分の摂り方の話しから養分の与え方の話しをしました。
どの方法がよい悪いというわけではなく、野菜を育てる方法がいくつもあって、農家が100人いれば100通りの育て方(野菜との関わり方)がありますよ、というお話です。

無施肥栽培といっても、
無施肥栽培の人もいれば、
一部有機・大半無施肥栽培の人も、その逆も
無施肥農薬栽培、
無施肥無化学農薬栽培(無施肥・有機農薬栽培)というように、

有機栽培といっても、
有機無機肥料混合栽培の人も
有機肥料無農薬栽培、
有機肥料農薬栽培、
有機肥料無化学農薬栽培(有機肥料・有機農薬栽培)というように

どんな栽培もあります。
言葉を省略すると中身が見えづらい。

栽培方法が気になる人もいるかと思います。そういった方はぜひ細かくその農家を知ってください。農家さんはそれぞれこだわりを持って栽培しています。
そのこだわりの由来がわかることで安心が得られるのでしたら無駄な労力ではないと思います。

少肥栽培(少量の有機肥料のみで栽培)の野良自然農園でした。
なにか参考になりましたらと思います。

(2017年夏より無施肥栽培に切り替えました。)

 

 

 

 

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