固定種・F1種・遺伝子組み換え種の違いは?

 

F1種 と聞いてすぐに答えられる人はかなり知識の豊富な方だと思います。
普通に生活していたら聞くこともない言葉だからです。

けれども聞いたことはあるけれど、実際のところはわからない。危険なものだと思うよ!、とか、遺伝子組み換えのこと?、とか、間違った解釈をしている方もいるのではないでしょうか。

今回は、F1種と遺伝子組み換えの違いをはっきり認識して、間違った批判、間違った賛同を正せれたらと思います。

 

ボリュームのある内容になっていますが最後まで読んでいただけたらと思います。

 

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<例えを交えて違いを知る>

これから3種類(固定種・F1種・遺伝子組み換え種)の種について例えを交えながら知っていただこうと思います。

まずは固定種です。

固定種とは、
親から子へほとんど同じ性質が受け継がれる種のことです。

例えば、アヒルの子どもがアヒルとして生まれる。生まれたアヒルが、生長して、子どもを産んだらまたアヒル

当たり前のように聞こえますが、まずはこの認識を忘れないでください。
子どもも孫もひ孫もほとんど同じ性質で生まれてくる。これが固定種です。

 

ではF1種の場合
親(父と母)の性質が違った場合に、子どもはすべて同じ性質で生まれてくるが、孫は違った性質で生まれてきます

例えば、
アヒルの父とカモの母との子どもはすべて同じ合鴨です。

しかし、合鴨合鴨の子ども(最初のアヒルカモからみたら孫)は、アヒルに近い合鴨だったり、カモに近い合鴨だったりが生まれてきます。

固定種では同じアヒルが生まれ続けるのに、F1種では違います。そもそもF1種は、親同士が違います。動物(水鳥)という枠組みでは一緒ですが、詳しく見たら違います。

 

では最後に、遺伝子組み換えをみてみます。

言葉の通りに遺伝子操作をされていることが前提です。
例えば、
命令系統にすぐれたの遺伝子が組み込まれたアヒル
普通のアヒルとの子ども、と考えてください。

生まれてくるその子供はアヒルの子どもです。しかも命令に従順な遺伝子が組み込まれているので、そのようなアヒルばかりが生まれてきます。

しかし、その孫の性質はバラバラです。従順なアヒルもいたらそうではないアヒルもいます。

比較してみると、
F1種は、アヒルカモのように人間が手を加えなくても現実に起こりうる交配です。
アヒルの交配もありえます。
これがF1種の例えです。

一方、遺伝子組み換え種は、アヒルの遺伝子との遺伝子が合わさるという、人間が手を加えなければ起こりえない交配です。

まずはたとえ話で違いを理解していただけたでしょうか。

次はそれぞれの目的についてみてみます。

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<固定種・F1種・遺伝子組み換え種にはそれぞれ目的がある>

F1種とは、雑種第一代(the first filial generation)の略です。

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図に 子F1 となっている列のことを指します。

親の2種類の性質を合わせると子どもの代では同一の性質が生まれますが、孫の代では違った性質がでてきます。
前提としては、親の性質もそれぞれ元々固定されていることです。

このF1種というのは、そもそも農家のために考え出された方法です。もっと辿れば、消費者のためです。

固定種を説明したときに、子どもに同じ性質が生まれ、さらに孫も同じ性質が生まれると言いました。大きくは正しいのですが、少し間違っています。
それは種の最大の目的を知ると納得できます。
種の最大の目的は、種の保存です。

つまり、すべて同一の性質を持った子どもばかりでは、気候変動などが起きたときに、生き延びる可能性が低くなってしまいます。そんな大げさでなくても、微気象の変化でも全滅です。

そこで種は考えます。少し性質の違う子どもも残そう!
大きくは違いませんが、微妙に違う。暑さに少し強い子どもや、飢餓に少し強い子ども。このように少し違いをつけて子どもを残すのです。それを専門用語で「種の変異性」と言います。

固定種といえども種の性質である変異性まで変えることはできません。ですので同じ性質の子どもが生まれてくるとは言いましたが、性質の違う子も生まれてきます。
固定種とは、同じ性質が続くように人間が理想の野菜の種を取りをし続けているもののことです。
それでも同一のものばかりではありません。

さて、
農家にとって、だんだん性質が変わっていってしまう収穫物は困ってしまいます。消費者にとっても不揃いの野菜はいろいろと面倒です。
そこでF1種という方法が考えだされました。
上の図に表した、いわゆるメンデルの法則を利用しました。

種会社が、親1と親2の固定種を育て続けるのです。
そして一部の親1と一部の親2とを掛け合わせることでできた種をF1種として販売するのです。そうすることで農家は性質のほぼ同じ収穫物を手に入れることができるのです。

例えば、暑さに比較的強いキャベツと、比較的甘いキャベツを掛け合わせることで、暑さに強くて・甘いキャベツが収穫できるのです。すると夏でも甘いキャベツを食べることができるようになるのです。

 

一方、遺伝子組み換えの目的も同じようなものです。

遺伝子組み換えは英語でGenetic ModificationというのでGMと略されることがあります。
そのGMの目的に真夏に甘いキャベツが食べたい、があったとします。

夏でも育つ甘いキャベツを作るために、
甘いサトウキビの遺伝子をキャベツに組み込んで、暑さに強いサソリの遺伝子もキャベツに組み込んでつくったキャベツは真夏でも甘い!

結局はF1種も遺伝子組み換えも目的は一緒です。

どうでしょうか。方法が違うだけで目的は一緒です。どれも消費者と生産者の要望に応えているだけなのです。

ではなぜ危険視されているのか。

 

<安全と危険の線引きがわからない>

あえて問題視されている事例を挙げます。

ハクサイに虫がついて収穫できない。収穫できたとしても虫食いの野菜はお客さんが嫌がる。

F1種を作り出す会社では、虫が嫌う匂いのハーブとハクサイを受粉させて、比較的虫が寄り付きにくいハクサイをつくる。

遺伝子組み換えでは、虫の天敵となる物質を遺伝子に組み込んで虫を寄せ付けなくする。

固定種では、虫にやられなかったハクサイの種だけを次世代に残す。

すべて目的は一緒だけど方法が違います。

 

遺伝子組み換えで問題視されているのは、

遺伝子操作によって、人間に害をなす物質が生み出されてしまうのではないかということ。それもまた未知なので想定できない。

現状としては、

強力な除草剤を散布して雑草を根絶やしにしたいのだけど、それだと収穫したい野菜もダメージを受けてしまう。

だったら遺伝子を組みを換えて、強力な除草剤でもダメージを受けないような野菜にしたらいい

虫に対しても一緒。殺虫剤が効かないように野菜の遺伝子を変えてやればいい。

 

<自分の意見をもって対処する>

遺伝子組み換えに関してはモンサントという会社が有名です。遺伝子組み換え種と農薬の組み合わせで利益を上げています。

モンサントのHPでは危険性が証明されていない、という内容が発表されています。

私はどうするかというと、自分の考えに立ち返ります。

いろんなことが畑では起きます。草に覆われたり虫にやられたり、病気がでたり。そんな状況でも立派に生き抜いた野菜たちをお客さんにお届けする、ということが僕の農家としての仕事です。ですから遺伝子組み換え種に手を出す必要がない、というのが僕の考えです。安全性や危険性がはっきりしないものには手を出さずに、むしろ避けて、野菜栽培をするほうが心地よいのでGM種は使いません。
ですが、F1種は自然界でも起こりうる交配なので使わせてもらっています

 

掘り下げていけばとても複雑な内容です。
そのような中、固定種・F1種・遺伝子組み換え種の違いを少しでもご理解いただき、野良自然農園では、どういった考えで種選びをしているかを知っていただけたら幸いです。

 

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