有機栽培のその先とは、自然栽培(無施肥栽培)なのか?

すこしづつ認知されてきた自然栽培。無農薬無施肥栽培と言い換えてもよいかもしれません。
この栽培方法が広まりつつありますが、はたしてその是非はいかがなのでしょうか。
僕の経験と意見をかかせていただき、今後の僕の栽培方法についても書いていきます。

 

 

<自然栽培とは何か>

congerdesign / Pixabay

 

自然栽培とは、木村秋則さんが有名にした栽培方法だと認識しています。

「奇跡のリンゴ」に代表される栽培方法で、無農薬・無施肥(肥料を与えていないこと)でリンゴ栽培を成功させたとして書籍化され、その後映画化されて有名になりました。

この木村さんの栽培では、無農薬と言っていますが、完全無農薬ではありません。
化学的に合成された農薬を使っていない、ということです。
つまり、有機的な農薬は使っています。

 

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<自然栽培の作物をつくる目的とは>

自然栽培を行う目的は、大きく3つあると思っています。

1、おいしい
2、無施肥でも作物が育つ
3、生き方の表現の一つ

<おいしい>

では、自然栽培野菜はおいしい、ということを考えてみたいと思います。

自然栽培の野菜がおいしいというのはウソです。

自然栽培の野菜はおいしいときもあるし、おいしくないときもある。

自然栽培の野菜をおいしく感じるときは、野性味のある、野菜の味が濃い、舌のピリピリ感がない、などだと思います。

これは自然栽培に限ったことではないことがわかりました。

気候の変化によって、とくに野菜にとって少し厳しい環境で栽培されると、野菜の野性的な特徴が表れるので、野性味がある、と感じるのです。
これは有機栽培でも化成肥料を与える慣行栽培でも一緒です。

野菜の味が濃いのは、その土地にある養分をゆっくり吸収することで味が濃くなります。(窒素分を多く吸収したことによる濃さとは少し違ったものです)
これは肥料の与え方で変わってくるので、自然栽培の特権ではないと思っています。

舌がピリピリする野菜というのがあるのですが、これはよほど敏感な舌を持っている方か日ごろから生野菜をそのまま食べている農家のような人が気づくことだと思うのですが、肥料分が多い野菜を食べたときに舌がピリピリする現象です。

これは肥料の過剰摂取が原因だと言われています。化成肥料のように吸収しやすい肥料を施肥することでこの現象が起きるとされていますが、
これは化成肥料に限らず、肥料を与えるのであれば有機肥料でも一緒です。さらに、養分の多い土地で栽培された自然栽培野菜でも一緒のことが言えます。

つまり、自然栽培だから絶対においしいとは言えないのです。

 

<無施肥でも作物が育つ>

これはこの通りです。

作物は無施肥でも育ちます。畑のような露地で野菜の種を適期に巻けば発芽をしてある程度は育ちます。

窒素、酸素、りん、カリ、微量ミネラルなど、自然の循環がうまくいけば作物は育っていきます。

ただ、その循環を作り出す〔お手伝いをする)のは人間です。

上手にその環境が出来上がると立派な野菜ができます。

土づくり、草との付き合い、風のコントロール、日当たり、間引きetc

その環境が不十分であれば、野菜が小さいままであったり、収穫適期がずれてしまったりするだけです。これも有機栽培と同じですが、

無肥料栽培でも立派な野菜が作れる、というロマンがあります。

 

<生き方の表現の一つ>

さきほどロマンといいましたが、

雑草を活かし、競争を作り出し、助け合いを作り出し、風を読み、水みちを読み、適期の種まき、最適な種まき手法を用いて、

自然界の作用を畑に表現する様は、壮大な自然を畑に集約したような小宇宙の世界です。
それを表現することは、人間をヒトととらえたときの生き方なのだと思います。
(何人かの先人の言葉を借りています。)

 

<自然栽培を実践した結果>

僕は自然栽培と呼ばれるものをやってみました。

僕は、おいしいといったような個人差があるものではなく、無施肥でも栽培可能なのだ、という自然を最大限生かした栽培に興味があったので挑戦してみました。

お米づくりでは無施肥栽培を確立することができました。記事はこちら

 

ここでのこだわりは、

肥料は与えません。有機肥料も化成肥料も与えません。

唯一、一次的に山からの清水をまくことはありました。

農薬は、有機だろうが化成だろうがまったく使っていません。

ビニールなどの化学的な農業資材も使っていません。

畝を立てて、種を蒔いて、タイミングを見計らって間引きをして、雑草を管理して(抜くこともあるし、刈ることもあります。そのときの状況に応じて管理方法を変えました)、収穫する。

結果、

野菜はできました。収穫しておいしく食べることができました。

なので満足したかというとそうではありませんでした。

一般的な栽培に比べて、種をまいてから収穫するまでの期間が少し長くなってしまいました。

スジが入って、食べにくくなってしまうまでが早かった。

野菜の大きさも小さめ。

細かい点を省くと、このような結果でした。

 

<野良自然農園は無施肥栽培を進めていくのか>

 

さきほど挙げた結果から考えて、僕はこの栽培方法を進めるか、という分かれ道に立ちました。

こうなったときは初心に戻るのが鉄則です。

そもそも僕は、自然の循環の中で、安全な旬の野菜を年中食べることができる状態にしたい。また、それを野菜セットという形で販売していきたい、という思いでした。

ですので、不満要素をかかえたまま無施肥栽培を進める必要がないという結論です。

安全な野菜を作るために、安心できる有機肥料を適切に使って、肥満体質の野菜を作らなければよい。
農薬が必要ないような健全な野菜を作ればよい。
端境期が短くなるように農業資材を上手に利用すればよい。

このような考えに至りました。

無施肥栽培でも野菜は育つ。この結果を得られたことがここ数年の最大の成果だと思います。

この経験を活かして、施肥型の有機栽培ではなく、一歩先の有機栽培を進めていけると思っています。

一つの覚悟が決まりました。

それでは今後も野良自然農園をどうぞよろしくお願いいたします。

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