いつからか言われていた言葉に「虫食い野菜はおいしい」というものがありました。
虫が食べれる野菜は安全だ、虫が食べるほどおいしい、ということです。
これは一種の常識であって、ほとんどの人がそう信じていました。
<自然との調和を目指す人たちの意見>
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自然農とか自然栽培とか聞いたことがあると思います。
深く知るわけではありませんが、僕が知りうる限りでは、彼らの主張は、
「(栽培作物を含めて)自然界のバランスがとれていれば、虫はつかない、虫食いはない」
ということです。
虫が野菜を食べるのはバランスが悪いから。言い換えれば、「虫は自然界の秩序を乱している植物を食べる」ということです。
例えば、
窒素を摂りすぎてしまった野菜を虫が食べる。窒素の溜まったところを食べてくれている。
植物に元気がないから、負担がかからないように、負担がかかっている葉っぱを虫が食べて植物を楽にしてあげている。
というように。
そもそも、植物は人間のように好き嫌いを言えないことが根本にあります。
根を伸ばして、そこにあるものをためらうことなく吸収してしまう。もう十分栄養は足りていて、これ以上要らないのに、際限なく吸収してしまう。
また、植物は自分で余分なものを排出することができないのです。ですから、虫に自分の身体を食べてもらうことで余分なものを取り除いている。
自然との調和を目指す人は、虫の役割に対してこう考えているのです。
もう一つは、虫食い植物とは自然淘汰された存在だ、ということです。弱肉強食のことです。
つまり、
虫食いがある野菜は、不健康で弱い野菜だ、ということです。
<慣行栽培を行っている人からしたらどうか>
一方、
農薬を使って野菜栽培をしている人からしたら虫食い野菜をどう考えているのでしょうか。
農薬や化学肥料を使って野菜栽培をすることを「慣行栽培」と呼んでいます。この栽培が一般的なのでこう呼ばれています。
この慣行栽培を行っている人を慣行栽培者と呼ぶことにして、
彼らが食べている野菜はスーパーに売られている野菜と同じなのでしょうか。
全員ではありませんが、出荷するための野菜と、自家で消費する野菜とを分けている人もいます。
出荷するための野菜は慣行栽培、自分の家で食べる野菜は無農薬栽培、というように分けています。この逆は聞いたことがありません。
そして、自家消費野菜には虫がついていることがある。
つまり、慣行栽培者にとって虫がつかない野菜は農薬で殺虫してある野菜、となるのです。
農薬の使用基準は国が安全基準を設けているので、その範囲内であれば安全だと言われています。
が、しかし、実際に農家が慣行栽培の野菜を(あまり)食べないのには、農薬に対するモヤモヤした気持ちがあるのだと想像できます。
この慣行栽培者の考えとしては、「虫食いの野菜は農薬がかかっていない証拠」であり、いつの間にか、「虫が食べるほどおいしい野菜」という言葉と合わさって、「虫食い野菜はおいしい」と一言で表現されるなったのだと思います。
<僕の、ある意味賛成意見、ある意味反対意見>
野菜を育てていると気づくことがたくさんあります。その中で、「虫が多く発生する時期がある」、ということを挙げます。
その時期は虫にとって快適に成長できる時期です。春と秋です。この二つの時期には虫が多い。
ではそんな虫たちは、何を食べたがるのでしょうか。
自然調和人からしたら、自然淘汰というように、弱いものから食べるのでしょうか。
一概にそうは言えません。
慣行栽培人からしたら、おいしい植物を食べる、というと思います。
どちらが合っていて、どちらが間違っているとは思いません。どちらもあり得ます。
僕が観察した様子では、虫は新芽をよく食べる。
「新芽」は植物のなかで一番勢いのある生命力あふれる部分です。つまり弱い部分ではありません。
かといって、虫が食べるからおいしい、と、人間と虫の好みを一緒に考えることもできません。
ですが、新芽は柔らかい、ということは言えます。
つまり、
虫食い野菜を言葉で表すのは大変で、日本のように四季折々の気候では、気候ごとに原因は変わるし、その土地の養分の具合でも変わるし、土質でもかわるし。
生長が悪いから虫が来たかもしれないし、
おいしいから来たのかもしれない。
住処にしていることもあります。
いろいろです。ぜひ聞いてください。気になったらぜひ関わっている農家さんに聞いてみてください。毎日観察している農家さんしかわからないことがたくさん聞けると思います。
届けられた野菜だけでなく、それを取り巻く状況にも興味をもっていただけたら幸いです。
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