晩夏から秋に野菜の収穫をしようとすると、なかなか難しい。それは夏の暑い時期に野菜の苗を作らなければいけないからです。
野菜にはそれぞれ生長できるための適温があって、その適温以外の温度ですと生長が極端に鈍ってしまいます。
ですから晩夏から秋に野菜を収穫できるようにするには相当な栽培技術が必要です。
毎日変わる日射や温度、湿度、風。夜温や放射冷却など。その日その日に変わる環境に対応させて苗を健全に育てていきます。
畑に苗を植えたあとにしっかり育ってくれるように土づくりも欠かせません。
苗を植えたあとも地温が上がらないように工夫し、水やりをし、と、農家として気が抜けないのが夏から秋です。
その努力の目的は、一年を通して採れたて野菜を食べ続けることです。スーパーへ行けば野菜はたくさんありますが、僕の野菜を選んで定期注文してくれるお客さんのためには踏ん張りどころの季節です。
そんな季節を乗り越えると待ってましたとばかりに冬の野菜が元気に育ってくれます。
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目次
<野菜にある2種類の適温>
野菜の生長には適温があるという話をしましたが、2種類の重要な適温帯があります。
一つ目は、発芽適温です。種が発芽するには水や酸素や光の有無がありますが、温度も関係しています。
二つ目が、生育適温です。生長するのに最適な温度のことです。
例えば大根の場合、
発芽適温は15~30℃で、生育適温は14~20℃です。
このように野菜が育つための適温は時と場合によって変わってきます。
<生育適温が10℃を下回る野菜はあまりない>
先ほどみたようにダイコンの生育適温は14~20℃です。
キュウリの生育適温は25℃~30℃
ジャガイモでは10℃~23℃
ほとんどの野菜は生長するために10℃以上の温度を必要とします。
適温がありますが、極端な場合を除いて、適温以外の温度でも野菜は生長をします。
日本人が南極に住むと寒さが大変だぁと感じるのと似ていると思います。
<生育適温を大きく下回ったらどうなるか>
野菜は生育適温を外れても生長をします。ですが水が氷る0℃になってしまったらどうなるのでしょうか。
それはもちろん、水分が凍る、です。
水分が凍ると細胞が壊れてしまうこともあって傷みの原因になります。
そこで野菜は考えます。「水分が凍って身体が傷むのを防がなければ!!」
どうしたら温度が低くなっても凍らないか。その答えは、糖分を保有することで0℃でも凍らない身体を作る、です。
水に砂糖(糖分)を加えて0℃の環境においても凍りません。糖度が高いほど凍る温度(凝固点)は低くなっていきます。
これを凝固点降下と言います。
つまり、野菜は体内で糖分を作り出して、凍りにくい身体にして冬の寒さに耐えているのです。
<凝固点降下は野菜の甘さに直結する>
冬の寒い時期にくると野菜は凝固点降下を利用して身体を守ります。
その過程で作られる糖分が、人間が野菜を食べて甘いと感じさせてくれるのです。
冬の野菜は甘くておいしい、というのはこういった理由からです。
これを野菜づくりをする人たちの間では、寒じめ、と言っています。
寒じめ野菜は甘い、とはこういった理由からです。
冬野菜の時期になったらぜひ甘みのある野菜を楽しみたいですね。
<甘みと引き換えに、傷みもでてきてしまう>
寒さにあたると野菜が甘くなる。と言いましたが、野菜の身体全部が寒さから身を守れるわけではありません。どうしても寒さにあたって傷んでくる部分があります。それは野菜によって葉先だったり根だったり茎だったりします。
農家にとっては甘くておいしい野菜を提供したい気持ちがある半面、傷みで出荷できない野菜が増えてくるというジレンマがあります。
<甘い野菜だけが善ではないことを確認>
さて、農業界では生育適温というものを意識します。スクスクと育つ温度のことですが、生育適温を下回った場合でも野菜は育ちます。さらに、甘みが増す、といううれしい結果をもたらしてくれます。
野菜にはそれぞれ適温があるとはいいますが、適温から外れた夏の大根は甘みがあまりありません。その分辛みが目立ちます。
ではその辛みは悪者かと言ったらそうではありません。その辛みには殺菌作用があります。
甘い野菜はおいしい。子どもも食べてくれる。といったことはありますが、春夏秋冬甘い野菜ばかりですとどこかバランスが悪そう、と感じますよね。その季節にあった野菜の甘さがあって、辛さがあって、苦みがある。それが旬の良さです。
それぞれ人間の身体に必要な旬の恩恵がそこにはあるのです。甘みにも辛みにも苦みにも感謝して旬の野菜をいただきましょう。
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