以前に、固定種・F1種・遺伝種組み換え種について書きました。
固定種・F1種・遺伝種組み換え種の違い
その中で今回はF1種の「雄性不稔」について書いてみたいと思います。
まれに、雄性不稔は自殺遺伝子のように言われたりしますが、ちょっと過激な表現です。実際のことを知らなければ不安を扇動することになってよくありません。
雄性不稔とは何のことで、どこまでわかっていてどこまでわかっていないか、何が危険視されているのか、それには根拠があるのかを見ていきたいと思います。
<雄性不稔とは>
京都産業大学の農学博士である山岸教授の言論を参考にして説明します。
雄性不稔とは、花粉を作らない性質のこと、です。
言い換えれば、花粉を作れない性質のこと、です。
こういった言葉の違いが大きな勘違いにつながったりします。
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<雄性不稔のメカニズム>
雄性不稔とは、花粉を作れないからよくない、という認識があり、それを人間に例えて、雄性不稔の食べ物を食べると子どもを創る機能がなくなる、と言われます。
なんとなくそんな気がしてきそうですが、実際はどうなのでしょうか?
京都産業大学のHPよりわかりやすい図がありましたので参考にします。
野生種の中で花粉を作らせないミトコンドリア遺伝子をもった植物を用意します。
次に、ミトコンドリアの働きを抑える能力のない核をもった栽培植物を用意します。
この2つの植物を受粉させることで雄性不稔(花粉を作らない)植物ができるのです。
(ちなみにこれはF1種という枠組みに含まれますが、すべてのF1種がこのような方法で作り出されるわけではありません。)
ここまでの理解ですとなんだか不安になりますが、
1つの理解として、自殺遺伝子という遺伝子はない、ということがわかっていただけたら十分です。二つの現象が合わさっているだけです。
次にさらに詳しくみてみます。
先ほど、ミトコンドリアには花粉を作らせない遺伝子がある、といいました。
ですが少し違います。図にあるような、ミトコンドリアにある遺伝子は、花粉を作らせない、わけではなく、その遺伝子はミトコンドリアの呼吸やATP(エネルギーを蓄えるところ)になにかしらの影響を与える。という言い方が正しい言葉です。
つまり、呼吸やATPへの何かしらの影響が、結果的に花粉を作りにくくしている。ということになります。
直接、花粉を作らせないようにしているわけではない、という認識が必要です。
この認識があるかどうかで雄性不稔をより正しくみれるかどうかが違ってきます。
<雄性不稔への危険視への疑問>
雄性不稔への疑問を人間に置き換えて考える人がいます。人間で例えるならば精子ができない男のことでしょ?と。
わかりやすそうな例えです。
が、一つ目の疑問として、植物と人間を同じに考えてよいのでしょうか。
二つ目の疑問は、先ほどみたように、花粉を作らせないのではなく、植物の呼吸とATPになにかしらの影響を与える、ということです。花粉を作らせないためにミトコンドリア遺伝子が動きだすわけではありません。
つまり、実際のところはよくわかっていないことなのです。
よくわかっていないことは、不安を煽られれば悪く思えるし、煽られなければ心配する必要はないですし。
世間が言っているような、雄性不稔は自殺遺伝子だ、という決めつけは間違っているということがわかっていただけたと思います。
私は、固定種の中からよさそうな品種を探して栽培します。そして、野菜の詰め合わせとして足りない分をF1種から探しています。
ですのでF1種を全面的に否定されるような記事に対しては僕なりの意見を表しておかなければいけないと思っています。
よくも悪くもこの記事で何かしら参考になることがありましたらと思います。
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