化学肥料にも有機肥料にもそれぞれメリット・デメリットがあることを知る。

前回の記事で野菜栽培で養分は必ず必要、という話をしました。

前回の記事:無肥料と無施肥と無栄養と有機栽培なんのこと?

その中で、養分は必要だけど、それを肥料として与えるかどうかは別の話し、という内容も含まれていました。

つまり、植物が生長に必要な養分を吸収できるのであれば、肥料を追加で与える必要はない、ということです。

では、植物が追加で肥料を求めた場合には、どういった対処が必要であるのかを、化学肥料と有機肥料のそれぞれの特徴を踏まえてみていきたいと思います。

生産者側の目線になっていますが、消費者の方にも肥料への認識を持つことで野菜選びのヒントになればと思います。

<肥料の基本的な考え方>

 

そもそも肥料は、収穫された野菜に含まれている養分(つまり、畑から持ち出された養分)を補うために与えられるものと考えられています。
つまり、畑から減った分の養分を足してあげましょうよ。ということです。

もう一つは、土に化学的変化をもたらすためにも施肥されます。が、ここでは触れないでおきます。

一応、肥料取締法というもので肥料が定義されています。

「肥料とは、
植物の栄養に供すること
又は
植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として
土地に施される物
及び
植物の栄養に供することを目的として植物に施される物のこと」

 

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<化学肥料と有機肥料の成分の違い>

 

Clker-Free-Vector-Images / Pixabay

 

肥料とは、化学的に処理(合成)された無機質肥料のこと。

有機肥料とは、正確には有機質肥料と言い、生物(植物や動物)由来の物質からつくられる肥料のこと。

植物の生長に必要な要素を、多量要素、中量要素、微量要素と分けていますが、
有機質肥料には、これらすべてが含まれています。
由来によって、
大豆油かすなどの植物質肥料
魚かすや骨粉、肉かすなどの動物質肥料や、
牛糞や樹皮堆肥を使った特殊肥料とに分類されています。

一方、化学肥料には、すべてを含めるものもあれば、単一の要素だけの肥料もあったりします。
例えば、窒素分だけの肥料だったり、カリウムだけの肥料だったりがあります。それを単肥と言っています。

また、単肥を2種類複合した複合肥料や、
肥料一粒一粒に必須要素の2種類以上を含ませたものを化成肥料と言ったりします。

このように、分類するといくつにもわかれますが、基本的に成分は一緒です。窒素をみたとしても、牛糞に含まれていようが、空気中の窒素から生成しようが、窒素(N)は窒素です。

ただ、肥料によって含まれる要素と、その配合が違うだけです。

 

 

<化学肥料と有機質肥料のその他の違い>

 

Jing / Pixabay

成分が一緒だということがわかりました。それ以外にはどういった違いがあるのかをみてみます。

化学肥料は、肥料の効き目が早い。
植物が必要なときに与えることができる。お腹がすいたらご飯をすぐに食べることができるファストフードみたいなものです。

効き目が早いとは、水やりなどして、化学肥料が水に溶けたら、すぐに植物は吸収できる、ということです。

一方、有機質肥料は、肥料の効き目が遅い。
お腹がすいてもすぐに食べることができない。
有機質肥料の場合の効き目が遅いとは、有機質肥料を微生物が分解するまで植物は吸収できない、ということで、化学肥料に比べて一般的に遅い、ということです。

必要なときに必要な養分を吸収できるように、その時差を補う予測や事前対応が必要です。
この土では肥料の効き具合はこれくらいだからこれだけ施肥しておき、一か月後にお腹がすくから効き具合を考えて、この時期に追肥(ついひ:後から肥料をまく)しておこう!と予測をたてます。

有機質肥料はさらに品質にばらつきがあります。化学的に合成された化学肥料だと品質が安定しているのは想像がつきますが、有機物を発酵させたり腐熟化させたりする有機質肥料はその年の温度や湿度・光などに影響されて品質がばらついてしまう。

そこで大事なのが、品質をできるだけ一定に保とうとすることの他に、土の緩衝力を高めておくことです。

つまり、物理的にも化学的にも土の中ではいろんな変化がおきている中で、事が荒立たないような土つくり(育土)をしておくことが重要になってきます。これを土の緩衝力といいます。
子育てで考えると、子どもが、親が予想していた道から外れたときにどう対応するか。事前に変化に対応できるように備えておくというようなものだと思います。
息子が学校へ行きたくない、と言い出したらどう対応しようか事前に心構えをしておく、というような。

MSneor / Pixabay

 

つまり、よくみることです。ただ見るのではありません。「よくみる」ことです。「よく観察する」と言い換えた方がいいかもしれません。過去の事例も合わせてよく観察していれば、そのあとの結果は必然(とまではいきませんが想定内)となります。
いろんな変化が起こりますが、事前に観察して心構えしておくことで取り返しがつかない事態を避けて軌道修正できるようにします。

 

 

価格の面をみてみると、
有機質肥料は化学肥料に比べて価格が高い
正確には成分量当たりの価格が高い。

ですが、有機質肥料には育土の効果があります
有機質肥料は微生物のエサでもあるので、育土という面からみたらメリットです。合わせて考えるとコストパフォーマンスはよいのかもしれません。

 

<特徴を活かした栽培方法>

 

これらの特徴のメリットだけを踏まえると、

植物の生長の土台である土をつくるために、有機物を施肥する。そうすることで微生物を活性化させ、土をよくする。そのあとに種を蒔き、植物の生長に合わせて必要な要素が必要な分だけ含まれた化学肥料を施肥する。

これが有機質肥料の特徴と化学肥料の特徴をそれぞれ活かした栽培方法になるのではないでしょうか。

ですがここではまだ品質や味や環境のことには触れていません。
化学肥料で育った野菜と有機質肥料で育った野菜。そこに違いはあるのでしょうか。

答えは、違いがある。です。

この内容は別の機会に譲りたいと思います。

今回は農家目線の内容になってしまいました。
それでも何か興味を持っていただけたら幸いです。

 

 

 

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