化学肥料も有機肥料も環境に悪い?

前回の記事の続きです。

前回の記事:化学肥料にも有機肥料にもメリット・デメリットがある

前回の記事で化学肥料と有機質肥料の特徴を農家の目線から書いていきました。
簡単にいうと、両方の特徴を活かすことで栽培しやすくなるという内容です。
今回は肥料の環境への影響について書きたいと思います。

 

3dman_eu / Pixabay

 

<植物は与えた肥料の一部しか吸収できていない>

 

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畑に肥料を施したとき、その肥料はいずれ植物の根が吸収します。それが植物の生長を促すことになります。
しかし、施した肥料の数十パーセントは植物に吸収されずに畑から流れ出てしまいます。

実際にどれだけの肥料分が違った場所へ流れているのかはわかりません。
1つの基準として、土の保肥力というものがあります。
陽イオン交換容量CEC)という指標を使って能力を計りますが、簡単には、漢字の通り、肥料を保つ力のことです。

保肥力が高ければ、肥料は長い間畑にとどまり、
保肥力が低ければ、肥料はすぐに地下や川に流れて行ってしまいます。

つまり、保肥力が高いと肥料は長く畑にとどまることができる。そのことで植物が吸収できる肥料の量が増えます。結果、垂れ流される肥料分が減ることにつながります。

また、保肥力が高いといっても、100の肥料を100のまま留めておく土壌はありません。

どうしても施した肥料の何十パーセントかは、畑の外に流れていってしまいます。

 

<肥料が環境に与える影響>

 

肥料は植物のために与えます。ですので究極的なことをいってしまえば、植物が育ってくれるなら、それ以外の影響は考える必要はありません。

ですが、これからの世の中そうではいかないでしょう。
環境の時代はもう始まっていますし、命の時代とも言われ始めています。

ということで、施肥による畑以外への影響についてみていきます。

一番の影響は、地下水や河川などへの流出による汚染です。

例えば、河川や湖に肥料分が流れ込めば、それは富栄養化の状態になります。
湖が富栄養化してしまったら、もともとの自然界のバランスがくずれて、プランクトンが異常発生します。これを環境用語で青粉(アオコ)といいます。
アオコが大発生すると、湖が酸欠状態になって魚介類が生きられなくなります。

湖の魚介類が全滅するというところまでいかないにしても、部分的にでも影響はありますし、蓄積されることによる害もあります。

 

他には、
硝酸態窒素の影響がありますが、これについては別の記事で書くことにします。

なんにせよ、人為的な施肥は環境に何かしらの影響を与えているということです。

 

<環境に対する有機質肥料と化学肥料の違いはあるのか>

 

ありません。
というよりも、どちらも害をなし得るし、なし得ないともいえる、という言い方が正しいです。

先ほど少し書きましたが、畑に留めておけない分の肥料は流出してしまいます。ですので、有機質肥料だろうが、化学肥料だろうが、留めておけない分は流れ出てしまうのです。

ではもう少し細かく見ていきます。

有機質肥料(特に動物性の肥料)も化学肥料も河川・地下水に流れ出ることで悪さをするということは同じですが、その流れ出方には違いがあります。

化学肥料の方が有機質肥料よりも流れ出るスピードが速い。

これは化学肥料は水に溶けやすいという特徴からきています。
水に溶けやすいので、雨が降り続いた場合にはあっという間に畑からなくなってしまいます。

一方、有機質肥料の場合は、植物が吸収できる形になるまでに微生物の働きが必要です。
ですので、施肥した分のすべてが一気に地下に溶けて流れ出ることはありません。微生物による分解が進んだ分だけ流れ出します。
地表に肥料を施した場合は、すぐに流れ出てしまう可能性があります。

 

 

<上手に使い分ける>

 

施肥

全農

化学肥料は水に溶けて一気に流亡するということを書きました。だからといって化学肥料がよくないわけではありません。

水に溶けやすいという特徴を利用して、一回で大量に施肥するのではなく、細かく回数を重ねて施肥すれば流亡する量は減るでしょう。
流亡する量を計算に入れて施肥したのでは、汚染量が増えるだけです。
また、水に溶けにくい化学肥料も開発されています。

有機質肥料も同じです。流出しないような技術を持つことです。それは保肥力を高めることであったり、施肥のタイミングを見極めることであったりします。

 

つまりは、肥料は環境に害を与える、というのは間違いです。
肥料の流亡が悪いというような内容を書いていきましたが、自然の生態系は無害化する力を持っています。
ただ、その無害化する力を超えてしまうと異常を起こしてしまいます、ということです。

つまり、化学肥料を使っていようが、有機質肥料を使っていようが、環境に配慮した生産者(農家だけではなく、家庭菜園でもだれでも)が施肥すれば、環境への負荷を抑えることができるということです。

これからの農業は環境への負荷を減らしつつ生産量を確保する時代。と僕は思っています。

環境を意識した肥料の使い方があるということを少しでも理解していただけたらと思います。

imonedesign / Pixabay

 

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